江戸の大晦日
江戸の大晦日には、変な鳥が飛びます。
「借金取り」という鳥です。
町に定住しますと買物は多少高くても同じ町内でする。
買物は現金払いではありません。掛売りです。
勿論、ある程度住んで信用を得てからの話ですが、年に2回、6・12月の支払いで、
年末である大晦日の商家は徹夜状態で、売掛金の回収をします。
ところが無い袖は振れないと払えない家も出てくる。
そうした場合は取り立てる方は必死の覚悟で行きます。
「大30日 首でも取ってくる気なり」
迎える方も真剣です。
「大晦日 首でよければ やる気なり」
居留守の家もあり、雪隠に籠ってる家もあり、急病になる家もあり、
虚々実々の駆け引きが除夜の鐘が鳴るまで繰り広げられます。
又、大晦日には正月に家を訪れる三河万歳が江戸橋の袂で大夫が相方を探し雇います。
それが風習となっていて、見つかると特訓をして元日から仕事です。
烏帽子に素袍の大夫が大黒頭巾をかぶった才蔵の鼓に合わせて舞ったり祝言を述べます。
三河万歳は、最も古い角付け万歳で家に行き、千年も万年もと祝言を言い
舞を舞って御祝儀を貰うのです。江戸の風物詩でした。
少し日日は戻りますが12月28日に江戸城で大掃除が終わると将軍や御台所から
側近の者に「御納戸払い」という事で、品々が下賜されました。
奥女中の大岡ませ子によると
「年中の召し物を下されます。
御年寄りは御紋付も貰います。葵紋の事です。
御年寄・御中臈は二つづつ貰います。
お次・御三の間は一品ですが、反物でいただきます。
御納戸払いは、上様付、御台所付の御中臈までくださいます。
私は、天璋院と御台所のを戴きました。」
将軍も同じように下賜した。
こうした場合は、出来るだけ身に着けていたもの愛玩の品々が喜ばれ
垢が付いていようものなら御垢付として名誉とされたのです。
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